毎日新聞 8月3日 (金)19時24分配信 卵巣の一部を凍結保存し、不妊治療に生かす新しい手法を、東京大と米ハーバード大のチームが開発した。食品の冷凍保存などに普及している「過冷却」を応用し、細胞を安全に凍結できるのが特徴で、がん患者が薬や放射線治療による不妊のリスクを回避し、治療後の生殖補助医療を受けやすくなるという。チームは2年後を目標に日本の大学病院などで、この方法が利用できるよう体制を整える計画だ。 ハーバード大の森口尚史客員講師(幹細胞医学)らは08年、子宮頸(けい)がんと診断された20代後半の米国人で治療前に腹腔(ふくくう)鏡手術を実施し、卵巣の表面を1センチ角の大きさで40枚分切り取った。がんの治療後、凍結保存しておいた一部を解凍し、卵母細胞(卵子のもと)70個を採取。このうち5個を女性の卵管内で24週間育てたところ、成熟した卵子5個を得た。女性はこの卵子で体外受精に成功し、現在妊娠中だという。がん患者が治療後の妊娠・出産を希望する場合、既婚女性なら夫婦の受精卵を凍結保存しておけるが、未婚の場合は卵子か卵巣組織を凍結するしかない。だがこれらは凍結に弱いうえ、卵子は採卵の負担が大きく、卵巣組織の場合はまぎれ込んだがん細胞が移植後に再発する可能性を否定できなかった。過冷却は野菜などを凍結するのに広く使われ、卵巣組織を健全に冷凍できる。健全な卵母細胞を選んで体内に戻すので、がん再発の心配もないという。【斎藤広子】
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