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Tuesday, October 2, 2012

中外製薬、「Nature Medicine電子版」に血友病Aの新しい治療コンセプトを発表

血友病Aに対する新しい治療コンセプトをNature Medicineに発表 -バイスペシフィック抗体が血液凝固第VIII因子の機能を代替-中外製薬株式会社[本社:東京都中央区/代表取締役会長 最高経営責任者:永山 治](以下、中外製薬)は、独自に創製した血液凝固第VIII因子の機能を代替する作用を有するバイスペシフィック抗体1)が血友病Aモデル動物において有効に止血作用を示すことを、奈良県立医科大学小児科と共同でNature Medicine電子版(10月号、9月30日(BST)よりNature Medicineウェブサイトで閲覧可能)に発表したことをお知らせします。(http://dx.doi.org/10.1038/nm.2942)なお、通常の抗体はY字型をしたタンパク質で、Y字型の先端部分にある二つの抗原結合部位が、同一の抗原と結合するのに対し、バイスペシフィック抗体は、二つの抗原結合部位が異なるよう人工的に設計された抗体で、それぞれの抗原結合部位が異なる抗原と結合できる抗体です。 血友病Aは、第VIII因子が欠乏し血液凝固反応が正常に進まなくなる遺伝性疾患であり、小児より反復する重篤な出血症状を呈する病気です。第VIII因子は、活性型第IX因子および第X因子に同時に結合して、活性型第IX因子による第X因子の活性化およびその結果として生じる血液凝固反応を促進します2)。そのため、血友病Aの治療には、出血を止める目的あるいは出血を予防する目的で、通常、静脈注射による第VIII因子製剤の補充投与が行われます。近年では、出血を常時予防する目的で、週に数回静脈内に第VIII因子製剤を投与する定期補充療法が広く実施されています。また、血友病Aでは第VIII因子が生来欠乏しているため、補充した第VIII因子製剤を異物として排除する中和抗体(インヒビター)が産生されることがあり、この場合、第VIII因子製剤による止血効果は十分に発揮されなくなります。 今回の発表では、本バイスペシフィック抗体が活性型第IX因子および第X因子と同時に結合することで第VIII因子と同様の機能を発揮し3)、第VIII因子がない状態さらには第VIII因子に対するインヒビターが存在する状態でも血液凝固反応を促進すること、非臨床の動物モデルで止血作用を示すこと、さらには高い持続性と皮下投与の可能性を有することを明らかにしました。これらの結果から、第VIII因子の機能を代替する本バイスペシフィック抗体は、インヒビターの有無に関わらず週1回の頻度の皮下投与で出血予防効果を示すことが期待され、血友病A治療において新しい治療コンセプトを提供するものと考えられます。 なお、バイスペシフィック抗体は分子構造が複雑であることから、従来の技術では医薬品としての製造が困難であり、現在までに遺伝子組換えバイスペシフィック抗体は上市されていません。中外製薬は、革新的な抗体工学技術の開発に取り組んでおり、バイスペシフィック抗体を医薬品に応用する独自技術も確立してきました。今回発表した第VIII因子の機能を代替するバイスペシフィック抗体は、こうした継続的な取り組みの中から生まれたものです。 中外製薬は、今回発表したバイスペシフィック抗体をさらに優れた分子(開発コード:ACE910)に改良し、2012年8月より国内において健康成人および血友病A患者さん(インヒビター保有および非保有)を対象とした第I相臨床試験を実施しています。 日本のバイオ医薬品のリーディングカンパニーとして、中外製薬は今後も革新的な技術の開発と、その技術を創薬へ応用することにより世界の医療と人々の健康に引き続き貢献していきます。

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