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Thursday, April 26, 2018

(エーブィエ バイオファーム) 日系企業向けベトナム医薬品開発と投資


ベトナム医療は魅力的な投資機会か? 同記事によれば、クリニックをホーチミン市に新たに開業した宗本氏は、神戸大学医学部を卒業後、東京虎の門病院に勤務。奈良県内で2件の有料老人ホームを運営しているほか、日本国内で調剤薬局を7件、病院を1件運営している。2016年にホーチミン市内の総合クリニックを買収。ベトナム人医師たちと診療を手がけるなか、医療の一層の充実を目指し、1712月にホーチミン市に「サイゴン虎の門クリニック」をオープンした。ホーチミン市では日本人の医師が既存の病院やクリニックに在籍するケースはあるが、日本人が医療施設を立ち上げるケースは珍しい。医師としてのキャリアをスタートした当時の東京虎の門病院では、ゼネラリストを養成するという米国式の教育方針の下、内科・外科をはじめとし、多くの科で研さんを積み、そのおかげで総合臨床医として、さまざまな分野の治療に関わることができた。ただ、医師数が増えるにつれ日本の医療は専門医の時代に。こうした変化の中で徐々に日本の医師のあり方に息苦しさを感じるようになり、「これまでの経験を生かせる充実した医療の場」を求め、海外進出を考えるようになったという。海外での開業は13年頃から検討・調査を始め、フィリピンや香港、中国にも足を運んだ。ベトナムでは医師のライセンスを取ることができ、日本での病院や調剤薬局などの経営は親族や関係者に任せることを決断。開業に至ったという。

「現地で医療機関の設立が可能か(資本比率や許認可関連)」について 宗本氏は、海外への医療進出を今からさかのぼること約5年前の13年頃から検討し始め、候補となりえるアジアの国々に積極的に足を運んだ。その上で、最終的にベトナムをその進出先として選定し、2017年末に開業に至っている。その決定における重要な要素として、ベトナムで医師のライセンスを取ることができたことと、現地で事業を買収することができたことが挙げられている。このように、実際の進出先選定において、医師ライセンスの取得が重要であることは、今回のシリーズでも「【ASEAN】ベトナム医療は魅力的な投資機会か?(12)」(https://www.nna.jp/news/show/1725620)において、既に記載した通りだ。さて、このシリーズのまとめとして、下記の10の医療サービスの進出の際に考慮すべき主要な点について、前回に引き続いて確認していきたい。(1)現地で十分な患者数、また今後の患者数の拡大は見込めるか(2)日本医療が現地での医療ニーズに対して十分効果的か(3)(日本から医師を派遣する場合)現地で日系の医師が市民に対して医療行為を行うことが法規上可能か(4)現地で日系の病院が提供するサービスに対して支払える「購買力」があるか(現地の所得水準が、日系医療サービスに対して支払えるレベルにあるか)(5)日本企業に準じる、または上回る医療技術やサービスを提供している現地の医療機関はどの程度あるか(日系病院の強みが競合と比較してどの程度発揮できるか)(6)現地で医療人材の確保が可能か(7)集客面で好ましい立地の確保が経済的見合う形で可能か(8)医薬品や医療機器など、現地において経済的に見合う水準での調達は可能か(9)(日本から医師を派遣する場合)日本から安定して医師を派遣できる環境か(10)現地で医療機関の設立が可能か(資本比率や許認可関連)今回は、いよいよ最後の「(10)現地で医療機関の設立が可能か(資本比率や許認可関連)」について、ベトナムの駐在員の滞在先環境について見ていきたい。

ベトナムの医療機関設立における主要な許可など ベトナムにおける医療機関の設立もしくはその持分の取得においては、結論からいうと法的には可能ではあるが、一方でその規模や立地、内容などにおいて、その進めやすさや許認可の取得の容易さは異なってくる。ベトナムでは、投資資本の総額が 5兆ドン(250億万円)以上である場合には、首相からの決定が必要となってくる。従って、大規模な病院を仮に設立するケースでは、首相、又は省級人民委員会から投資方針に係る決定を得ることが必要になる。ただ、金額がそこまで大きくない場合においても、このプロセスを経たほうがいい場合もあるので、ケースバイケースで検討することが重要だ。もし投資規模がそこまで大きくない場合は、上記の投資方針に係る決定を経ずに、いわゆる「投資登録証明書」の取得に進む。そもそもこの投資登録証明書は、外国投資家が新規に会社を設立し、投資を行う場合について取得が必要とされている証明書だ。この投資登録証明書の取得に加えて、外国投資家の投資プロジェクトについては、その事業体の設立について、「企業登録証明書」と言われる証明書の発行を受けることも必要とされている。上記の書類は、基本的に医療機関以外の場合においても必要になるが、医療機関の設立においては上記に加えて他にも多くの書類が必要になってくる。今回は、その中でも特に重要な病院施設運営許可について記載したい。ベトナム診療法第42条によれば、病院施設の運営を実際に開始する前に運営許可を取得しなければならないとある。この病院施設運営許可においては、設立する施設の規模や目的に応じて、必要となる最低病床数や施設の基準、医療設備、建設基準、人員の基準、診療科等が細かく定めている。例えば総合病院の場合、最低病床数は30床必要であり、また診療科は内科、外科、産科、小児科の中から少なくとも2つを有する必要がある。それ以外にも細かな基準が色々と設定されているため、確認が必要だ。病院施設運営許可以外にも、建築許可、汚水排出許可、有害廃棄物登録証、環境影響評価報告書の承認等といった、各種の証明書等を取得する必要がある。それぞれ状況に応じて必要な内容が異なってくるため、法務アドバイザーにしっかり個別の状況に応じて確認することが重要となる。このような一連の許認可の取得は、新興国においては一般的に一筋縄でいかないことも多く、法律で記載されている内容をそのまま踏襲しているにも関わらず、不要に時間がかかることもある。そうしたリスクも織り込んだ上で、実際の設立までのスケジュールを立案することが必要になってくる。新興国では一般的にこうしたプロセスは大変で、めげずに粛々と進めていく忍耐力が試される。

結局、ベトナム医療は魅力的な投資機会なのか? さて、今回長きにわたりベトナムの医療環境について、「ベトナム医療は魅力的な投資機会か?」のテーマで連載してきた。特に医療機関設立の進出先を決める際の10の重要な論点についてまとめてきた。結論としては、ベトナムは総合的に見て、日本にとって魅力的な投資機会であるといえる。日本における医療関連の市場規模が今後人口の減少に伴い、より縮小していくことが予想される中で、より早期にこうした市場に少しでも足掛かりを築くことが、長期的に見て日本の医療機関の競争力強化につながるだろう。当然そうした進出におけるリスクは大きいが、何もしないことのリスクと比較すると、長期的に見てどうだろうか。日本の医療機関においては、そうした戦略的な判断がより問われることになるだろう。

<筆者紹介> 杉田浩一株式会社アジア戦略アドバイザリー 代表取締役。カリフォルニア大学サンタバーバラ校物理学および生物学部卒。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)経済学修士課程卒。15年間にわたり複数の外資系投資銀行にて、海外進出戦略立案サポートや、M&Aアドバイザリーをはじめとするコーポレートファイナンス業務に携わる。2000年から09年まで、UBS証券会社投資銀行本部M&Aアドバイザリーチームに在籍し、数多くのM&A案件においてアドバイザーを務める。また09年から12年まで、米系投資銀行のフーリハン・ローキーにて、在日副代表を務める傍ら東南アジアにおけるM&Aアドバイザリー業務に従事。12年に、東南アジアでのM&Aアドバイザリーおよび業界調査を主要業務とする株式会社アジア戦略アドバイザリーを創業。よりリスク度の高い東南アジア案件において、質の高いアドバイザリーサービスの提供を目指してASEAN各国での案件を遂行中。特に、現地の主要財閥との直接の関係を生かし、日系企業と現地企業間の資本・業務提携をサポートしている。


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