2018.05.24 コーセーは、肌とスキンケア製剤のもつ「電気的親和性」に着目した研究の知見を具現化し、肌への吸着性に優れた浸透製剤「イオン化カプセル」を開発した。この成果を今秋発売のスキンケアブランドに展開していく考え。化粧水・乳液といったスキンケアアイテムは、肌を潤いで満たすことで、肌本来の基本機能であるバリア機能を高める重要な役割を担っている。さらに、毎日使い続けることによって、ハリ・ツヤのある肌へと導き、見た目の印象にも大きな影響を与えるため、効果的に潤いを肌に届ける仕組みの設計は非常に重要だ。そこで今回、肌に素早くなじみ、角層の深くにまで効率的に潤いが浸透していくような新たなスキンケア浸透製剤の開発を行った。これまで、製剤の浸透性を高める技術として「生体親和性」に着目し、リン脂質を用いたカプセル化技術や、浸透促進成分を配合するなど、さまざまなアプローチで研究をしてきたという。今回、新たに肌とスキンケア製剤との「電気的親和性」に着目することで、従来にない肌への高い吸着性をもつ新規浸透製剤「イオン化カプセル」を開発した。同カプセルは、生体細胞の構成成分でもあるリン脂質をベースに、細胞間脂質構成成分であるコレステロール、そして、プラスに帯電しているカチオン性成分を用いることで、マイナスに帯電している肌表面へ電気的に素早く吸着し、角層の深くにまで効率的に潤いを浸透させることができるとのこと。今回開発した「イオン化カプセル製剤」を、横向きに設置したヒト皮膚の表面付近に滴下させ、肌への親和性を評価した。結果、従来のカプセル製剤は、カプセルが溶液中に分散したままなのに対し、「イオン化カプセル製剤」は、電気的に皮膚表面にカプセルが引き付けられており、肌への親和性が高いことが分かった。次に、肌への吸着性の高さを検証するため、ヒト皮膚にカプセル製剤を滴下し、10分後に表面をティッシュオフした際の皮膚表面におけるカプセルの吸着状態を評価した。結果、いずれのカプセル製剤を用いた場合も、角層への浸透は見られるものの、従来のカプセル製剤の場合は、皮膚表面上に吸着しているカプセルが少ないのに対し、「イオン化カプセル製剤」の場合は、ティッシュオフ後も、多くのカプセルが皮膚表面上に吸着していることが確認された。このように、「イオン化カプセル製剤」は従来の製剤と比較すると、肌に対して高い吸着性があることが分かった。さらに、「イオン化カプセル製剤」の場合、皮膚表面に均一かつ高濃度にカプセルが吸着している様子が確認され、同カプセルを用いることで、効率的に角層へアプローチできることが分かった。一般的に、薬剤学で用いられている経皮吸収の考え方のひとつに、経皮吸収速度を上げる要素として「目的物質の濃度を高める」手法が用いられている。同カプセルを用いることで皮膚表面のカプセル濃度が上昇することから、角層内への浸透能力も向上するのではないかと考え、「イオン化カプセル製剤」と従来のカプセル製剤を用いた皮膚浸透性の評価を行った。そこで、蛍光色素を用いて、ヒト皮膚に対する浸透能力を評価した結果、「イオン化カプセル製剤」は、従来のカプセル製剤と比較して角層まで蛍光色素の赤色に染まっている様子が確認された。このように、イオン化カプセル製剤はヒト皮膚に対する高い浸透能力があることが分かった。コーセーでは、30年以上にわたりスキンケア製剤におけるカプセル化技術の研究を続けてきた。その中で今回、浸透技術に肌との「電気的親和性」というアプローチを加えることで、新規のスキンケア製剤の開発に成功した。
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