老化に伴う皮膚の変化皮膚の老化に伴う変化、すなわち、シワやきめの消失、弾力性の低下等については、加齢のほか紫外線の照射、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄等のある種の外的因子により亢進する。これらの変化をミクロ的にみれば、コラーゲン、エラスチン等の真皮マトリックス成分が減少し、この変化を誘導する因子として、特にマトリックスプロテアーゼの関与が指摘されてきている。雛(しわ)は一般の人々,特に中年女性などの間で 大変関心がもたれているが,これまで皮膚科学,皮膚病 理組織学においてはほとんど取りあげられることがなか った は雛を顔や腕の日光照射部に生じる交 差皺 やカラスの足跡 などの皺群と高齢者の非照射部位,特に腋窩,大 腿,腹部に生じる弛緩した皮膚とその表面に生じる沢山 の細かなヒダとして現れる皺群を区別し,前者 が光加齢を,後者が本来の加齢を反映したものであると。している.後者は病理学的に表皮下の線維が消失し,深部 の線維がより粗くより絡み合うようになる結果,弛緩し た皮膚を生じる.また,表面に現れる沢山の細かいヒダ は表皮と真皮を結合させる縦に走る弾性線維が消失し, 表皮と真皮が密着しなくなり生じると説明される。 マトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinase)は、細胞外マトリックスのタンパク質成分を分解する金属酵素の総称であり、通常以下の5群に分類されている。 コラゲナーゼ群には、MMP-1(間質コラゲナーゼ)、MMP-8、MMP-13等が含まれる。MMP-13にはタイプIコラーゲン等の分解作用を有する。 ゼラチナーゼ群には、MMP-2、MMP-9等が含まれる。これらMMP-2、9は、基底膜成分であるタイプIVコラーゲンやラミニン、真皮マトリックス成分のエラスチン等を分解する酵素として知られている。 MMP-2は、紫外線の照射によりその発現が大きく増加するMMP-1によっても、活性化され、肌の老化は一層進む事となる。 ストロムライシン群には、MMP-3、MMP-10等が含まれる。これらMMP-3、10は、基底膜成分であるプロテオグリカンや、タイプIVコラーゲン、ラミニン、その他フィブロネクチン等を分解する酵素として知られている。 膜結合型マトリックスメタロプロテアーゼ群には、MMP-14、MMP-15、MMP-16、及びMMP-17が含まれる。 その他の群としてMMP-7、MMP-11、及びMMP-12が含まれる。 MMP-12はマクロファージで発現するマクロファージエラスターゼ(HME)とも称され、マトリックスメタロプロテアーゼファミリーの一メンバーであり、エラスチンを分解する。また、エラスチンの他に、IV型コラーゲン、ファイブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチンなどのマトリックス、ノンマトリックス成分を分解する。また、これらのマトリックスメタロプロテアーゼと各種疾患との関係が徐々に明らかになってきており、慢性関節リウマチ、動脈硬化、変形性関節症、歯周疾患、異所性脈管形成、腫瘍性浸潤および転移、潰瘍形成、骨疾患、血管再閉塞、血管再狭窄、HIV感染症、または糖尿病合併症の治療および予防にマトリックスメタロプロテアーゼが深く関与している。
No comments:
Post a Comment