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Friday, April 27, 2018

(エーブィエ バイオファーム) 糖尿病の膵島移植の画期的な方法を開発 iPS細胞で再生した膵島の移植にも最適


課題をすべて克服し安全 カテゴリー:1型糖尿病医薬品/インスリン 医療の進歩 福岡大学と理化学研究所は、画期的な膵島細胞移植の方法を開発したと発表した。膵島を「鼠蹊部」の皮下脂肪組織に移植するというもので、従来の移植法の課題をすべて克服する画期的な方法だという。膵島移植の課題をすべて解決1型糖尿病の日本での年間発症率は10万人あたり12人。ほとんどの1型糖尿病患者は生涯にわたりインスリンの毎日数回の自己注射、またはインスリンポンプによる投与を続けており、糖尿病患者の99%を占める2型糖尿病とは原因も治療の考え方も異なる。インスリン注射から解放される方法のひとつとして注目されているのが、インスリンを作る膵島細胞を糖尿病患者の肝臓内に移植する「膵島細胞移植」だ。世界では、2000年から2016年まで約1,000例の膵島細胞移植が行われている。しかし、肝臓内移植膵島は免疫抑制剤を使用しても、移植後数時間で起こる早期拒絶反応によって、移植した膵島細胞が破壊されるため、1人から採取した膵島細胞すべてを移植しても治療効果は得られず、23回の移植、すなわち23人から採取した膵島細胞を1人に移植しないと治療効果が得られない。さらには、個々の膵島の大きさが直径平均0.2mmと小さく、移植後は肝臓内に散在するために、超音波や、X線を利用するCTではみつからず、拒絶反応の診断ができない。そのため、問題が起こった時に取り出せないといった課題がある。福岡大学と理化学研究所の研究グループは、膵島移植後の早期拒絶反応のメカニズム、ならびにコントロール法を明らかにしてきたが、今回の研究で、肝臓内膵島移植の課題をすべて解決する画期的な「膵島皮下脂肪組織内移植法」を開発した。今回の研究は、福岡大学基盤研究機関膵島研究所(安波洋一教授)と理化学研究所統合生命医科学研究センター免疫制御戦略研究グループ(谷口克グループディレクター)の共同研究による成果だ。

膵島が移植後に生着 CTで造影され、摘出も容易 従来、肝臓内に代わる膵島移植部位として皮下が注目され、研究されてきたが、通常の皮下は血管に乏しく血流が少なく、移植後に膵島は酸素不足、栄養不足により大半が死滅してしまい、機能不全に陥ってしまう。移植膵島の生着率が極めて低いことが課題となっており、マウスの実験で通常の皮下に膵島を移植した場合、1匹の糖尿病を治すには56匹分の膵島が必要となる。これは、皮下は血管に乏しく、移植膵島の生存に必須な血流が不足し、大半の移植膵島が死滅してしまうことによる。そこで研究グループは皮下で血流が豊富な部位を探した。その結果、「鼠蹊部」の皮下脂肪組織に着目すると成功しやすいことを発見した。鼠蹊部皮下脂肪組織は下肢の大腿動脈から分かれる下腹壁動脈という血管によって栄養が送られ、血流が豊富だという。実際に糖尿病マウスの皮下脂肪組織内に膵島を移植すると、下脂肪組織内移植膵島は塊(平均径12mm)を形成し、下腹壁動脈と交通する新生血管により栄養され生着し、塊となった移植膵島はCTで造影され、容易に摘出もできることが分かった。また、拒絶反応を抑えるために現在使用されている免疫抑制剤の移植後短期間の使用で容易にコントロールできた。驚くことに、肝臓内膵島移植では2匹分の膵島が必要となるが、鼠蹊部皮下脂肪組織への移植では1匹分の膵島移植で糖尿病が治癒した。さらに、この方法で免疫不全マウスに移植したヒト膵島がマウスの糖尿病を直すことも判明した。

iPS細胞で再生した膵島の移植にも最適 今回開発した膵島皮下脂肪組織内移植法は、従来の肝臓内移植法の課題をすべて克服する画期的な移植方法になるという。ヒトも解剖学的に同じ皮下脂肪組織があるため、ヒトでも同様の効果があると考えられる。さらに、最近では糖尿病の再生医療としてiPS細胞、ES細胞からインスリン産生細胞を創生し、移植に用いる治療法の開発が進められている。これらの細胞は移植後の発がんが危惧されるため、問題が発生したときには直ちに判定し、除去できる移植方法であることが必須となる。この点についても、今回の皮下脂肪組織内細胞移植法は最適で、今後の糖尿病治療への貢献が大いに期待できる。今回の研究は、膵島移植による糖尿病治療に画期的進歩をもたらすと期待される。研究成果は、国際移植学会誌「Transplantation」に発表された。


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