訪日外国人に病院困った無保険でお金払ってもらえず2018/4/9日本経済新聞朝刊訪日外国人観光客が年々増える中、急に病気になった外国人が病院などで治療を受けた後に医療費を支払わないケースが多発しているのが分かった。厚生労働省の調査によると、外国人患者を受け入れたことのある医療機関のうち、3割が不払いの経験があった。政府は訪日客の急増で医療機関に生じる想定外の負担を懸念し、5月にも総合対策をまとめる。 厳しすぎる対策は訪日客増にブレーキをかけるとの声も(東京都台東区の浅草寺) 厚労省が3761の医療機関を対象に2016年に実施した調査によると、回答があった1710機関のうち、約6割で外国人が入院し、約8割が外来で訪れた。外国人を受け入れたことのある1378機関のうち、35%が1年間に不払いを経験した。調査は日本に住む外国人患者も含むが、政府関係者は「言語などが不慣れですぐに帰国する訪日客に関するトラブルが多い」としている。例えば、訪日客が多く訪れる沖縄。同県の医師会による17年の調査では、回答した19病院の約3割で不払いがあった。中でも、脳梗塞や急性大動脈解離などの事例で260万~500万円超に上るケースも見られた。不払いの一因は、旅行保険に加入する外国人が少ないことだ。欧州などでは保険加入をビザ取得の条件にする国も多いが、日本は事実上未対応。自己負担が膨らんで支払えず、病院が泣き寝入りせざるをえなくなる。病院側の受け入れの問題もある。どんな医療を施すか事前に相談しなかったため、高額な治療費の請求段階で反発して支払わないケースも少なくないという。現金しか受け付けない病院で、外国人患者の決済手段がなく結果的に不払いになってしまうこともある。長期治療が必要になったり亡くなったりするとさらに難しい。母国に搬送する場合、医療機関の負担が一層重くなりかねないからだ。病院が多額の費用や手続きを負担するケースが多いという。北海道のある病院経営者は「時間をかけるほど費用がかさみ、経営が圧迫される」と語る。17年の訪日客数は最高の2869万人。政府は20年に4000万人を目標に掲げるが、国際医療福祉大学大学院の岡村世里奈准教授は「外国人の医療を巡る問題への対処は道半ばだ。自治体など関係者全体で取り組む必要がある」と指摘する。政府は内閣官房に不払い問題に関するタスクフォースを立ち上げ、厚労省、外務省、観光庁などが連携して対策をつくる。在外公館が旅行客向けに保険加入を推奨し、旅行会社には保険付きのプランの充実を求める。電子マネーやクレジットカードなどでの支払いが可能な病院を増やすため、導入補助の制度なども整備する考え。厚労省は外国語による疾病ごとの治療・価格メニューをつくり、事前同意してもらえるようにする。ただ、対策が厳しくなりすぎれば、訪日客増にブレーキがかかりかねない。政府内にビザ取得の際の保険加入の義務化を求める声もあるが、慎重論が根強い。観光客受け入れ促進と、受け入れ側のトラブル回避との両立が難しい政策課題になりつつある。(辻隆史)
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