結節性多発動脈炎は、2012年Chapel Hill会議で中血管炎に分類されている。大血管炎より発症が急で、炎症性動脈瘤や狭窄を伴う中小動脈の壊死性動脈炎で、支配領域の壊死を伴いやすい。糸球体腎炎、細動脈、毛細血管、細静脈などの血管炎は通常伴わない。ANCA抗体との関連はない。
治療 ステロイド(1mg/kg/day max 60-80mg/day)で治療を開始する。炎症が安定したら、週あたり5-10mg減量し、20mgまで減量したらその後は減量ペースを落とす。腎不全、腸間膜動脈の虚血や神経障害などの重篤な血管炎症状を伴う場合は、ステロイドにシクロフォスファミド(CYC)点滴(6-12ヶ月投与し、その後アザチオプリンへ変更)を併用する。重症の血管炎では点滴CYCを2週毎1ヶ月、その後4週毎12ヶ月の継続が6ヶ月の継続より成績がよかった。高血圧にはACE阻害薬を用いるが、Crが20-30%上昇してくるようならCa拮抗剤などへ変更する。結節性多発動脈炎260例と好酸球性多発血管炎性肉芽腫症82例の解析では、予後不良因子として、尿蛋白1g/day以上、血清Cr>1.58mg/dl、消化管障害(出血、穿孔、梗塞、膵炎)、心筋障害、中枢神経障害、が指摘されている。
鑑別すべき疾患 分節性動脈中膜融解 Segmental Arterial Mediolysis (SAM) 画像所見が結節性多発動脈炎と似るが、炎症や動脈硬化性変化などの基礎疾患はない。中~高齢者で血管中膜平滑筋の融解と肉芽組織による置換により、血管径の不整や多発する動脈瘤を形成する稀な疾患である。血管造影では数珠状の不整拡張と狭窄などを呈する。全身性疾患ではなく、病変は主に腹部大動脈分枝の一枝から複数枝に生じ、突然の腹腔内出血や後腹膜出血で発症することがある。冠動脈や脳底動脈の報告もある。慢性炎症を示唆する検査データに欠ける。治療は塞栓術や外科手術である。* Slavin RE. Segmental arterial mediolysis: course, sequelae, prognosis, and pathologic-radiologic correlation. Cardiovasc Pathol. 2009 18(6):352-60.
線維筋性異形成 Fibromuscular Dysplasia (FMD) 画像所見が結節性多発動脈炎や高安動脈炎などと似るが、炎症や動脈硬化性変化などの基礎疾患はない。15~50歳の女性に多く、中膜周囲の線維増殖を特徴とし、典型的には動脈の中部から遠位部に数珠状の拡張と狭窄病変が見られる。腎動脈(60-75%)や頭蓋外脳血管(25-30%)を侵しやすいが全身の複数血管(28%)でも生じる。腎動脈病変から腎性高血圧を生じたり、脳血管病変では頭痛やめまい、脳梗塞を生じる事もある。* Slovut DP, Olin JW. Fibromuscular dysplasia. N Engl J Med. 2004 350(18):1862-71.
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