有望な"膣内培養カプセル" 現行の受精卵培養と同等の妊娠率 体外受精は今や、不妊治療の"標準治療"ともいえ、さまざまな方法が開発されている。一方で、治療を受けるカップルの頭を悩ませているのが、高額な治療費だ。治療費が高くなる要因の一つが、受精卵を培養する施設の設備維持・運営の費用。しかし、受精卵の培養を女性の膣(ちつ)の中で行うことで、治療費を大幅に下げられる可能性が見えてきた。10月18~22日に米ホノルルで開かれた米国生殖医学会の会合で、その"膣内培養"を行うカプセル型の機器を使った臨床試験の結果が発表され、注目された。
自然妊娠と同じ環境 この機器は、米INVO Bioscience社が開発した「INVOcell」というのもの。酸素と二酸化炭素と透過する無菌状態のプラスチックカプセルの中に受精卵を入れ、女性の膣内で数日間、培養させる。膣の中は受精卵(胚)の発達にぴったりなpH(ピーエイチ=水素イオン濃度=酸性・アルカリ性の度合い)と温度が維持されているため、自然妊娠と同じ環境での培養が期待できるという。現在の不妊治療では、女性から取り出した卵子へ精子を注入し(顕微授精)、受精卵(胚)を子宮に移植できるまで培養施設で成長させる。INVOcellはこの培養を女性の体内で行うもので、実用化されれば設備を使わない分、不妊治療のコストは大幅に低下する可能性がある。
17人中10人が妊娠中 米生殖支援センターのKevin Doody氏らは、18~38歳の不妊女性33人を対象に、受精卵を培養施設で培養した場合と「INVOcell」を使って膣内で培養した場合とで、妊娠率を比較した。その結果、培養施設と「INVOcell」で妊娠率は変わらず、現在、培養施設グループの16人中10人、「INVOcell」グループの17人中10人が妊娠中という。Doody氏らは「不妊治療に体外受精が必要となることが多いが、高額な費用が障壁となっている。その一因として、培養施設ではきれいな空気を保つための高額な空調システムや、施設に常駐するスタッフも必要なことが挙げられる」と説明。こうした経費がかからない「INVOcell」による膣内培養の妊娠率が、培養施設を利用した場合と同じ程度ならば、より多くのカップルが不妊治療を受けられるのではないかと期待を示している。
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