-メチルブチレート(HMB)による筋肉量、筋力、及び歩行能力に関する研究レビュー
3-ヒドロキシイソ吉草酸 (3ヒドロキシイソきっそうさん、β‐ヒドロキシ‐β‐メチル酪酸、英: 3-Hydroxy 3-MethylButyrate, HMB, 3-HydroxyIsovaleric Acid, 3-HIA)はイソ吉草酸のβ位の炭素にヒドロキシ基が結合した短鎖分岐ヒドロキシ脂肪酸である。必須アミノ酸であるロイシンの代謝中間体のひとつで、1996年にアイオワ州立大学のDr. Steven L. Nissen によりその効能が発見された。筋肉量の増大あるいは減少抑制を目的とした研究に用いられたり、ボディビル用サプリメントとしてカルシウム塩(英)などの形で海外では販売されている。サプリメントではその成分を β-Hydroxy β-MethylButyrateと表示することが多いが同じ物質である。
現在のところHMBの作用機序はmTOR経路によるタンパク質合成促進 ユビキチン/プロテアソーム経路の抑制によるタンパク質分解の抑制 HMB-CoAはHMG-CoAに変換されコレステロール合成促進による筋鞘安定化 によるものと考えられている。
一日あたりHMBカルシウム塩(英)を3グラム摂取することでタンパク質の異化(分解)抑制 筋肉量の増加、筋肉減少の抑制、筋肉の修復、耐久性増加 を助ける可能性がある。 なお70歳代の老人においても筋肉量の増加や体脂肪減少が実験により確認されている。また、がん悪液質、糖尿病、エイズ、火傷などいくつかの体重が減少する疾患においてHMBが症状改善につながらないか研究がなされつつある。
目的:スポーツ選手やトレーニングされた者を除いた健康な者に、3-ヒドロキシ-3-メチルブチレート(HMB)<以下、「HMB」と記載する>を摂取させると、HMBを摂取しない場合またはHMBの摂取前に比べて、筋肉量及び筋力が増加したり、低下が抑制されて維持したりするか、また、歩行能力が改善するか、についての検証を目的としました。
背景:自立した日常生活を送り続ける上で、心身機能の維持及び向上は不可欠であり、筋肉量及び筋力の維持・低下抑制、歩行能力などの身体機能の維持及び改善は、重要な要素です。HMBは、複数の文献で筋肉量、筋力、歩行能力に関する効果が報告されていますが、スポーツ選手やトレーニングされた者を除いた健康な者に対する効果を総合的に評価した研究レビューはありませんでした。
レビュー対象とした研究の特性:文献データベースを用いて、スポーツ選手やトレーニングされた者を除いた健康な者に、HMBを摂取させると、筋肉量及び筋力が増加したり、低下が抑制されて維持したりするか、また、歩行能力が改善するか、について論文を検索しました(検索日 2018年2月26日、2018年1月24日)。またハンドサーチを実施しました(検索日2018年2月26日)。最終的に 6 報のランダム化比較試験の論文を採択しました。本研究レビュー実施にあたっての利益相反はありません。
主な結果:HMBの摂取は、自立した日常生活を送る上で必要な筋肉量及び筋力の維持・低下抑制、ならびに歩行能力の改善に役立つ可能性が高いことが示されました。HMBの一日あたりの有効な摂取量は1.2~2.4gであると示唆されました。なお、重篤な副作用はみられませんでした。
科学的根拠の質:研究の限界としてはスポーツ選手やトレーニングされた者、及び日本人を対象とした報告が含まれていないことが挙げられます。採択した文献にスポーツ選手やトレーニングされた者を対象とした試験は含まれていませんでしたので、トレーニング等で鍛えられた筋肉や筋力への有効性は不明です。従いまして、確認された筋肉量及び筋力についての機能性は、自立した日常生活を送る上で必要な筋肉量及び筋力に限定されます。なお、採択した文献はいずれも海外での研究でしたが、日本人やアジアで行われた研究においても同様の結果が報告されていることから、日本人においても同様の機能が期待できると考えられます。
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