( エーブィエ バイオファーム)公開日時 2018/07/17 03:50 東京女子医科大学血液浄化療法科の土谷健教授は、7月12日に都内で開かれた大塚製薬主催のプレスセミナーで、「CKD診療ガイドライン2018」で常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)へのサムスカ(一般名:トルバプタン)投与は、推奨グレードを「B1」に位置付けたと紹介した。ガイドラインは6月に5年ぶりに改訂され、同剤の推奨を初めて明記した。土谷教授はガイドラインに明記されたことで、「専門医ヘの紹介の根拠となる。まだ診断がついていない患者を見つけていきたい」と述べ、かかりつけ医から専門医への紹介の流れが加速することに期待感を示した。ガイドラインでは、成人のADPKD患者の治療について、「サムスカ治療は腎容積の増加と腎機能低下を抑制する効果を有するため、使用するよう推奨する」、「eGFR25~65の比較的進行した成人ADPKD患者に対しても、サムスカ治療は腎機能低下を抑制する効果を有するため、その使用を推奨する」と明記された。ただし、小児における安全性と有効性は確立していないとしている。同剤の臨床第3相試験「TEMPO3:4」試験や、「REPRISE」試験で同剤の有効性が示されたことが根拠となっている。ガイドラインのADPKDの作成委員長を務めた土谷教授は、これまで治療法がなかった疾患だけに、「患者の関心を高め、受診の機会になる。創薬のインパクトは大きい」と述べた。その上で「患者の予後に影響を与える薬。見逃さないで飲んでほしい」と訴えた。土谷教授によると、100人余りの患者へのサムスカの投与経験から有用性に手ごたえを感じているとした。セミナーでは、サムスカを9年間内服した40代の女性患者について、「サイズは200ccしか変わらず、腎機能が維持できた」などと報告した。一方で利尿効果が強く、タクシー運転手や介護中の患者のなかには自由にトイレに行けず、服用を断る人もいるとして、職場環境や生活環境を聞き取ることが必要との見解を示した。ADPKDは、腎臓に嚢胞が無数にでき、腎機能が徐々に低下する遺伝性腎疾患。患者数は日本で約3万人いるとされ、国の難病にも指定されている。根本的な治療方法はなかったが、2014年に大塚製薬のサムスカが進行を抑制する世界発の治療薬として日本で承認された。同治療薬は、ADPKDの治療薬として米国でも4月に承認を得ている。なお、日本腎臓学会では、かかりつけ医向けの診療ガイドと、専門医向けの診療ガイドラインをそれぞれ刊行してきたが、6月に発刊された「CKD診療ガイドライン2018」では一本化された。
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