レッスン6 知的財産権(1)医薬品 高安 雄一 【プロフィール】 バックナンバー2012年9月25日(火)1/5ページ はてなmixiチェックシェア 「TPPを議論するための正しい韓米FTA講座」の第6回は、知的財産権について取り扱います。韓米FTAで知的財産権を規定した部分は第18章ですが、「このなかにも毒素条項(韓国経済・社会にダメージを与える条項)がある」と、メディアやネットで主張している人々がいます。いつものとおり、「毒素条項」とする根拠から見ていきます。まず「韓国人、韓国政府、韓国企業に対する知識財産権を取り締まる権限を、米国系企業が直接持つようになり、後発医薬品(ジェネリック薬)生産が不可能になり、薬の価格は青天井に高まる」ことが挙げられています(*1)。またある新聞には、「インターネット検索が著作権の侵害となるなど、日常的なインターネット利用ができなくなる」と書かれていますし、そのほかにも、「知的財産権が保護される期間が延びて、一般利用者の負担となる」、「知的所有権を保護するため、過度な処罰がなされる」といった主張もなされているようです(*2)。そこで知的財産権については、まず医薬品、特にジェネリック薬に焦点を絞った議論をしていきましょう。その後に、他の知的財産権に関する問題を取り上げ、韓米FTAの知的所有権に関する規定が、韓国の経済・社会に悪影響を及ぼすのかを検討します。ということで、今回はジェネリック薬について検討していきます。
先発薬品メーカーの目の上のコブジェネリック薬とはご存じの通り、先に開発・発売された薬(先発医薬品)と同じ有効成分で、効能・効果が等しい医療用の医薬品のことです。これを発売するにはもちろん、先発医薬品の特許が切れた後でなければなりません。厚生労働大臣の承認後、新たに他社から製造、販売されるため、「後発医薬品」とも言われています。効き目や品質、安全性が同等で、価格は先発医薬品の7割以下、5割以下の場合もあり、先発医薬品を開発したメーカーにとっては非常にやっかいな存在となります。医薬品メーカーは莫大な開発費と長い時間をかけて新薬を開発します。具体的に数字で見てみましょう。新薬開発の成功率は4千分の1から1万分の1、しかし、成功した場合は売り上げに対する利益率が20~30%と高い利益を創出します。また別の数字を見ると、新薬の開発費は1億ドルから6億ドルかかりますが、品目当たりの年間純利益は、1億6千万ドルから3億ドルにもなります(世界100大医薬品基準)(*3)。*1)以下の毒素条項に関する記述は、外交通商部(2011)27ページにより記述した。 *2)これら主張については、2011年12月2日に行われた、チェソクヨンFTA交渉代表による記者ブリーフィングで紹介された(この内容は、外交通商部の韓米FTAホームページに掲載されている)。 *3)本段落は、韓国特許庁(2009)9ページにより記述した。
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