アトピーアレルギー喘息喫煙薬国立成育医療研究センターアレルギー科の山本貴和子氏、同科医長の大矢幸弘氏らの研究グループは、2歳までの抗菌薬の使用が5歳時のアレルギー疾患発症と関連することを見出した。この研究は、Ann Allergy Asthma Immunol 2017; 119: 54-58に掲載され、今年5月10日の同センター公式サイトでも発表された。
保護者へのアンケートに基づいて検討 アレルギーを発症させる要因の1つとして、胎児期から小児期の受動喫煙や大気汚染の曝露が指摘されている。さらに近年、抗菌薬の使用がアレルギーの発症リスクを上昇させるとする報告が海外でなされた。今回、山本氏らは、日本の子供においても抗菌薬の使用がアレルギーの発症リスクと関連するのかどうかを、同センターの出生コホートデータで検討した。調査対象は、2004年3月~06年8月に同センターで出産を予定した一般集団の妊婦(1,701人)と生まれた子供(1,550人)。生後2歳になるまでの抗菌薬の使用歴と、5歳になった時点でのアレルギー性疾患の有無について、保護者に回答してもらった。なお、回答が得られたのは902人であった。
気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎と関連 解析の結果、2歳までの抗菌薬使用歴がある子供が5歳時に気管支喘息を有するリスクは、使用歴のない子供の1.72倍だった。また、アトピー性皮膚炎を有するリスクは1.40倍、アレルギー性鼻炎は1.65倍だった。これを抗菌薬の種類別に見ると、セフェム系抗菌薬の使用は気管支喘息のリスクが1.97倍に、アレルギー性鼻炎のリスクが1.82倍に、マクロライド系抗菌薬の使用はアトピー性皮膚炎のリスクが1.58倍になった。2歳までの抗菌薬使用と子供のアレルギー性疾患発症との関連がその後どのような経過をたどるのか、また抗菌薬使用がどのようにしてアレルギー性疾患を発症させるのかについては、今後の課題であるとしている。
抗菌薬のリスクとベネフィットを考えて使用を 同センター感染症科医長の宮入 烈氏は、公式サイトで次のようにコメントしている。「多くの細菌感染症では抗菌薬の使用が必要になりますが、一般的な風邪のほとんどはウィルス感染症で抗菌薬が効きません。抗菌薬を使用することにより、腸内細菌が乱れて下痢をしたり、抗菌薬が効かない耐性菌が増えたりすることが知られています。今回の研究結果も合わせ、抗菌薬のリスクとベネフィットを考慮して使用を適切に決定することが重要です」
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