大阪大の研究チームは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)で心臓の筋肉のシートを作り、心臓病患者に移植する世界初の臨床研究計画を、年度内に開始する。16日に厚生労働省の部会が計画を条件つきで了承。大阪大の澤芳樹教授(心臓血管外科)が、東京都内で開かれた記者会見で計画の詳細を明らかにした。澤教授らの説明によると、計画では京都大から健康な人のiPS細胞を提供してもらい、心筋細胞に変化させて直径数センチの円形シート(厚さ0・1ミリ)に加工する。心筋の一部が機能しない「虚血性心筋症」の患者3人(18~79歳)の心臓に2枚ずつ貼る。シートは自ら拍動し、心筋再生を促す成分を出す。シートの細胞は3か月で消失する。この日の厚労省部会では、計画の妥当性などを議論。〈1〉当初の計画より重症の患者に対象を絞る〈2〉患者の同意説明文書を分かりやすく書き直す――ことを条件に了承した。大阪大が計画を修正した後、厚労相が承認する。澤教授らは、太ももの筋肉由来の細胞で作るシートも開発しているが、重症の虚血性心筋症患者には効果が薄かった。そこで、心筋細胞そのものに変わるiPS細胞を使って、こうした患者の治療を目指すという。iPS細胞を使う再生医療では、目の難病治療が先行するが、今回は生死に直結する心臓が対象で、移植する細胞数も目の400倍の約1億個と多い。心筋細胞になり損ねた細胞が混じっていると、腫瘍が生じる恐れがある。このためチームは移植後1年間、安全性と有効性を見極める。澤教授は記者会見で「これから投与する細胞の培養を始める。安全性を配慮しながら、年度内に何とか1例目をスタートしたい」と述べた。iPS細胞を提供する京都大iPS細胞研究所の山中伸弥所長は「新しい治療として確立されることを期待するとともに、慎重に経過を見守りたい」との談話を発表した。
Friday, May 18, 2018
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