子宮筋腫の治療にはどの方法が有効か 子宮筋腫は子宮の良性腫瘍で、害がない場合もありますが、痛みや出血の症状を現すことがあり、いくつかの治療法があります。これまでの研究データをもとに、治療法ごとの効果などが調査されました。アメリカの政府機関の医療研究・品質調査機構(AHRQ)が、子宮筋腫の治療について、文献の調査に基づいて治療法ごとの効果などを評価し、まとめて公表しました。調査にあたった研究班は、論文データベースを検索して、子宮筋腫の治療についてこれまでに研究結果として報告されているデータを集めました。GnRHアゴニスト、子宮動脈塞栓術、手術の効果について
調査で見つかった研究報告から、以下の内容が得られました(一部を紹介しています)。
GnRHアゴニストは子宮筋腫を小さくし、出血症状を改善する(中等度の強さの証拠)
子宮動脈塞栓術は子宮筋腫を小さくする(強い証拠)
子宮動脈塞栓術は出血を改善する(強い証拠)
子宮動脈塞栓術は生活の質(QOL)を改善する(中等度の強さの証拠)
子宮筋腫核出術は生活の質を改善する(弱い証拠)
子宮全摘除術は生活の質を改善する(弱い証拠)
違う治療法のどちらが優れているかを直接比較した質の高い研究はほとんどない 待機的管理を評価するよう計画された研究はない 再治療について、30代の女性で最初の治療から2年以内に再治療が必要になる割合を推定した結果、最初に薬物治療または子宮筋腫核出術を行なっていた場合は6-7%、最初に子宮動脈塞栓術を行なっていた場合は44%と計算された
女性の背景や子宮筋腫の状態と治療効果などの関連は不明GnRHアゴニストは、性ホルモンなどの分泌を減らす作用のある薬です。日本でもリュープロレリン酢酸塩(商品名リュープリン®など)などのGnRHアゴニストが、子宮筋腫を小さくするなどの目的で使用可能となっています。ここでも子宮筋腫を小さくする、出血を減らすといった効果があると見られました。GnRHアゴニストの副作用については、更年期のような症状の報告や、副作用の一部はホルモン治療によって軽減できるとした報告などが見つかりました。子宮動脈塞栓術は、血管の中にカテーテルという細い管を入れて行う治療です。子宮筋腫に向かう血管の中に物質を注入して中を塞ぐと、血流がなくなり子宮筋腫の成長が止まって小さくなります。子宮動脈塞栓術は子宮を残したまま症状の軽減などを図る治療です。子宮動脈塞栓術は出血を減らすなどの効果があると見られました。子宮筋腫に対しては、手術も治療法のひとつです。子宮を温存する手術として子宮筋腫核出術、温存しない手術として子宮全摘除術があります。どちらの手術でも生活の質を改善すると見られるデータがあったものの、不確かさが残ると判断されました。手術によって周りの臓器を傷付けたことなどの報告が見つかりました。 治療法の優劣を直接示す結果は得られなかったものの、再治療が必要になったかどうかのデータを集めたところ、最初の治療が薬物治療または子宮筋腫核出術であれば2年以内の再治療は6-7%だったのに対して、最初の治療が子宮動脈塞栓術だった場合には2年以内の再治療が44%でした。
平滑筋肉腫の割合について また別の観点から次の結果がありました。160件の研究のデータの中では、子宮筋腫と推定されて手術をした女性のうち、平滑筋肉腫が見つかった人の割合は1万人あたり0から13人だった 平滑筋肉腫は、子宮にできる悪性腫瘍(がん)の一種です。仮に子宮平滑筋肉腫があった場合、手術の中でも特定の方法(電動モーセレーター)を使うことで、がん細胞を周りに広げてしまう恐れがあるとして、米国食品医薬品局(FDA)がその方法を使わないよう勧めたという経緯があります。研究班は子宮平滑筋肉腫が見つかるまれな場合において、「子宮筋腫除去の方法は生存率に影響するかもしれない」と記しています。
子宮筋腫の治療法をどう選ぶか? 以上で子宮筋腫の治療法についての調査を紹介しました。この調査でGnRHアゴニスト、子宮動脈塞栓術、子宮筋腫核出術、子宮全摘除術の効果などについてのデータが見つかっていました。それぞれの治療に違った狙いがあり、実際には患者の希望などに合わせるよう使い分けられています。特に妊娠する可能性が残るかどうかは大きな違いです。妊娠を希望する場合には、GnRHアゴニストや子宮全摘除術などは選択肢としては選びづらいです。一方で妊娠を希望しない場合には症状をなくすことに重きをおいて子宮全摘除術が有力な選択肢になるかもしれません。そうした判断の中で、上に紹介したように、望む結果についてどの程度確かなデータがあるかがまとめられていることは、実際に治療法を選ぶための重要な材料の一つとすることができます。
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