外傷性脳損傷で認知症リスクが25%増加 事故研究認知症外傷で脳に損傷を負ったことのある人は、ない人に比べて認知症になるリスクが約25%高いことを示す大規模研究の結果が、米国とデンマークの研究グループによって医学専門誌Lancet Psychiatry(2018; 5: 424-431)に発表された
279万4,852例を平均9.89年追跡 認知症患者は全世界で約5,000万人存在し、今後20年間に倍増すると推定されている。一方、世界では毎年5,000万人以上が外傷性脳損傷を受けているとされる。外傷性脳損傷では、転倒、交通事故、暴行などにより頭部に強い打撃を受けることで脳が損傷し、脳の正常な機能が障害される。外傷性脳損傷は認知症の危険因子の1つと考えられているが、長期に追跡した大規模研究はほとんどない。そこで研究グループは、外傷性脳損傷と長期の認知症リスクとの関係を検討した。デンマークの国民登録から、1995年1月1日時点で同国に住んでいたデンマーク人で、追跡期間の1999~2013年に50歳以上になった全員をピックアップし、同国の患者登録から外傷性脳損傷に関する情報、精神医学中央登録と処方登録から認知症の情報を得た。対象は279万4,852例で、平均追跡期間は9.89年だった。1977~2013年に13万2,093例(4.7%)で少なくとも1回の外傷性脳損傷歴が確認され、12万6,734例(4.5%)が1999~2013年に認知症を発症した。解析の結果、外傷性脳損傷歴のある群ではない群と比べて全認知症のリスクが24%増加〔ハザード比(HR):1.24〕、アルツハイマー病のリスクが16%増加(HR:1.16)した。認知症のリスクは外傷性脳損傷後の最初の6カ月間が最も高く(HR 4.06)、外傷性脳損傷の回数が増えるほど認知症リスクが高まった(1回でHR:1.22、5回以上でHR:2.83)。また、外傷性脳損傷を受けた時期別に、その後の認知症リスクを検討した。20代で外傷性脳損傷を受けた人は受けなかった人に比べて30年後に認知症を発症するリスクが63%高く、30代で外傷性脳損傷を受けた人は受けなかった人に比べて30年後に認知症を発症するリスクが37%高かった。研究グループは「外傷性脳損傷を受けた人全員がその後、認知症を発症する訳ではない。しかし、外傷性脳損傷を予防する対策を講じることで、認知症の発症を低減させる可能性がある」と述べている。
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