カナダ・トロント小児病院のAmirreza Haghighi氏らは,妊娠中に母親が喫煙した子供では体脂肪量や脂肪摂取率が多かっただけではなく,記憶などをつかさどる脳の一領域、扁桃体の体積が小さかったと、9月3日付の米医学誌「Archives of General Psychiatry」(電子版)に発表した。妊娠中の喫煙は肥満のほか、子供にさまざまな悪影響を与えることが報告されている(関連記事1、関連記事2、関連記事3)。母親の喫煙で出生体重が低く授乳期間が短い妊娠中の喫煙は、ニコチンによって母親の血管が収縮して胎児への栄養や酸素の供給が低下し,胎児の末梢(まっしょう)神経などの成長に支障を来すことが考えられるという。しかし,これまで報告されてきた子供の将来的な肥満リスクとの関連については,メカニズムが明らかにされていない。 そこでHaghighi氏らは,カナダ・ケベック州の同一地域に在住の若者を対象とした研究のデータから,13~19歳の男女378人を抽出。母親が妊娠中期(およそ16~27週に該当)に1日1本以上喫煙していた180人を喫煙暴露群とし,残りの198人(非曝露群)と以下の項目について比較した。なお,喫煙曝露群の母親の妊娠時1日当たり平均喫煙本数は11.1本だった。暴露群と非暴露群で男女比,平均年齢,身長,体重,母親の妊娠期間などで差は認められなかったが,暴露群では非暴露群と比べて出生体重が低く,母乳による授乳期間が短かった。
"脂肪好き"に脳領域が修正か 検討の結果,暴露群は非暴露群に比べて体脂肪量が1.7キロ多く、年齢や性別,出生時体重,母乳による授乳期間,母親の妊娠期間,世帯収入などの要因を除いても,体脂肪量は0.1キロ多かった。また、脂肪摂取率も曝露群で3.4%高かったという。脳の3領域の体積は、扁桃体のみが暴露群で小さいことが分かった(非暴露群と比べ67立方ミリメートル減)。今回の結果について,Haghighi氏らは「妊娠中の喫煙が,胎児が将来的に脂肪摂取を好むよう扁桃体を修正していることが示唆された」と結論。さらなる解明のためには,子供だけでなく親も対象にした大規模研究を行うべきと主張した。
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