京都大学大学院の川上浩司教授らの研究グループは、妊娠中の母親の喫煙や出産後の受動喫煙が子供の聴覚障害リスクを上昇させることをPaediatr Perinat Epidemiol(2018年6月5日オンライン版)に報告した。妊娠中の母親の喫煙と生後の受動喫煙で子供の10.3%に聴覚障害研究グループは、2004〜10年に生まれた5万734人の子供の母親に対して、喫煙や子供の受動喫煙の状況についてアンケートを行った。その結果、約75%は母親の喫煙歴も生後の受動喫煙もなかったが、15.2%(7,733人)の母親に妊娠前の喫煙歴があった。3.8%(1,947人)の母親は妊娠中も喫煙していた。母親の喫煙歴はないが、生後に受動喫煙を受けていたのは3.9%(1,996人)で、妊娠前の母親の喫煙歴があり、生後に受動喫煙を受けていたのは1.6%(829人)であった。妊娠中の母親の喫煙に加えて生後の受動喫煙を受けていた例も0.9%(479人)存在した。3歳の時点で4.6%の子供に聴覚障害があった。母親の喫煙歴と受動喫煙の両方がない子供の聴覚障害の割合は4.1%であったが、母親が妊娠中に喫煙し、生後の受動喫煙を受けていた子供では10.3%と2倍以上だった。子供が聴覚障害になる危険性は、母親が妊娠前に喫煙していた場合は1.26倍、生後に受動喫煙を受けていた場合は1.3倍、母親の妊娠前の喫煙と生後の受動喫煙がある場合は1.62倍、母親が妊娠中に喫煙していた場合は1.68倍に増大した。母親が妊娠中に喫煙し、さらに生後に受動喫煙を受けていた場合は2.35倍に増大した。また、危険性は妊娠中の母親の喫煙本数が増えるほど高まる。喫煙本数が1日10本未満の場合は1.63倍、10本以上の場合は1.9倍であった。研究グループは「妊娠中の母親の喫煙と出産後の受動喫煙は、子供の聴覚障害の危険性を高めることが明らかとなった。これらを避けることで、子供の聴覚障害の危険性を下げる可能性がある」と結論した。また、生後に受動喫煙を受けるよりも、母親が妊娠中に喫煙していた方が危険性が高かった点について「胎児は母親よりも体内のニコチン濃度が高くなることに加え、発達中の胎児の蝸牛はニコチンや他の化合物の毒性の影響を受けやすいのかもしれない」と付け加えた。
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