2018年5月21日「男は仕事、女は家庭」。こうした考えが根強く残る台湾で、産後の女性が赤ちゃんと1か月ほど病院で休養できるサービスの利用が増えている。台湾社会の伝統に根差したサービスが出産した女性のスムーズな職場復帰を後押ししている。(台北 牧野田亨)病院などが現代風にアレンジしているのは、産後は1か月休むという「坐月子」と呼ばれる台湾の風習だ。台湾が農業中心だった時代は、各家庭に定着し、母親の休養と体力回復に役立っていた。核家族化が進展し、病院などが代行したものだ。台北市の金融機関に勤める蘇倍萱さん(32)は今年1月、市内の協和婦女医院で次男を出産し、そのまま「坐月子」サービスを利用した。利用中に訪ねると「赤ちゃんを見る以外は食べて寝て、時々テレビを見る。とてもリラックスできる」と笑った。 部屋はシャワー室にベッドルーム、応接室を完備。食事も1日5食と充実している。赤ちゃんは看護師が24時間体制で見守る別フロアの新生児室におり、会いたければいつでも会える。小児科医や婦人科医が控え、定期的な診察や育児相談も受けられる。 蘇さんは2015年に長男を出産した時にも、サービスを利用した。料金は1日6500台湾ドル(約2万4000円)と高めだが、「職場に復帰した時、体調がとても良かった。ゆっくり休め、出産前の体調を回復しやすい」と満足している。サービスには日数に応じた割引や、労働者向けの公的保険の給付金も使える。台湾の法律では8週間の産休が認められる。蘇さんの勤務先は3か月の産休が認められるという。台湾の人口は約2357万人。少子化で伸び悩み、現状だと25年には減少に転じると予測され、女性は経済発展の担い手としての役割も期待されている。衛生福利部(厚生労働省に相当)によると、同サービスの利用者は15年時点で約8万5000人。提供する施設は201か所で、10年で4倍超に急増した。働く女性支援として一定の役割を果たしているようだ。台湾で昨年10月に女児を出産した卓球選手の福原愛さん(29)もこのサービスを利用し「多くの日本人に知ってほしい」とブログで絶賛した。協和婦女医院の林経甫院長(73)は「しっかり回復して職場に戻れば、体力もある。(母子ともに健康な)『幸せなお母さん』は職場にとっても助けになるだろう」と指摘した。 韓国でも、産後、子供と数週間宿泊して療養する「産後調理院」と呼ばれる施設があり、利用者は多い。看護師などが子供の世話をしてくれるほか、食事やマッサージなどのサービスも受けることができる。日本の女優が利用したことでも話題となった。台湾の調査(2016年10月時点)によると、結婚した女性(15~64歳)のうち、仕事をしていないのは42.76%にあたる221万2000人。このうち、結婚や妊娠が理由で仕事を辞めて、その後仕事をしていない人は47.37%に上った。低賃金に苦しむ若者には育児費用の負担も重く、託児施設も不足し、出産自体をためらう傾向がある。台湾では、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は昨年、1.125にとどまった。日本の1.44(16年)より低い。行政院(政府に相当)は30年までに合計特殊出生率を1.4に引き上げる目標を掲げる。育児費用の支援策として、0~4歳の子供1人に対して月2500~3500台湾ドル(約9000~約1万3000円)の補助金支給などを打ち出している。
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