Wednesday, June 27, 2018

(エーブィエ バイオファーム) より早い段階での使用や分子標的薬との併用も検討


ニボルマブとペムブロリズマブは、最初から使用する1次治療としての検討が現在進行中で、その結果が待たれている。さらにニボルマブとイピリムマブの併用療法も、1次治療としての検討が行われている。また、免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬の併用も注目されている。分子標的薬の中で特に期待されているのが血管新生阻害薬だ。血管新生とは、傷が治る過程やがんなどでみられる、組織に酸素や栄養素を取り込むために新しい血管を形成すること。この血管新生で重要な役割を担うVEGF(血管内皮細胞成長因子)は、がんを認識して攻撃しようとするT細胞の働きを抑制するとみられている。基礎研究では、VEGFをブロックすれば、がんの血管新生が抑えられ、免疫環境を改善する効果が期待できることが報告されている(Voron T, et al. J Exp Med 2015)。現在、さまざまながんを対象に、血管新生阻害薬のラムシルマブとペムブロリズマブとの併用が検討されている。また日本では、ラムシルマブとニボルマブの併用、パクリタキセルとラムシルマブとニボルマブの併用が検討されている。ただし効果が期待される反面、毒性も増加する可能性がある。特に注意が必要になるのは免疫関連有害事象で、これは治療で活性化された免疫系ががん細胞だけでなく正常細胞も攻撃することで起こる。

免疫チェックポイント阻害薬投与後の抗がん剤投与が有望昨年話題になったのが、米国においてペムブロリズマブが、がんの原発部位ではなく、遺伝的特性であるMSI-H(マイクロサテライト不安定性陽性)またはdMMRDNAミスマッチ修復機構欠損)の固形がんを対象に承認されたことだった。MSI(マイクロサテライト不安定性)は、がんが発生する素地となる遺伝子の傷を修復する機構に欠損があること、dMMRは遺伝子の傷を修復する機構の1つであるDNAミスマッチ修復機構が欠損していることを指す。米国からの最近の報告では、MSI-Hのがんは化学療法では効果が得られず、免疫チェックポイント阻害薬の成績が良好であることが示され(Janjigian YY, et al. Cancer Discovery 2018)、治療戦略を立てるうえで発想の転換が必要であることが示唆された。米国のNCCNガイドラインでは、胃がんの中でMSI-HまたはdMMRのがんに限り、本来は3次治療以降での使用が承認されているペムブロリズマブについて、2次治療で使うことを推奨している。また、免疫チェックポイント阻害薬の投与後に抗がん剤を投与すると、効果が上がる可能性も報告されている。肺がんの過去のデータの検討では、免疫チェックポイント阻害薬を投与する前に抗がん剤を投与した場合と比べて、奏効率が上昇することが認められた(Schvartsman G, et al. Lung Cancer 2017Park SE, et al. J Thorac Oncol.2018)。この可能性について、室氏らも愛知県がんセンター中央病院で過去の治験のデータの検討を行っている。胃がんの3次治療以降の治療として、免疫チェックポイント阻害薬を投与した後に抗がん剤を投与し、評価が行えた16人と、免疫チェックポイント阻害薬が投与されていない状態で3次治療として抗がん剤を投与した86人を比較した(K Kato, et al. ASCO-GI 2018)。免疫チェックポイント阻害薬が投与された16人は、すでに多くの治療が行われており、通常では抗がん剤の効果は期待できない患者だったが、奏効率は38%と高い数字となった。免疫チェックポイント阻害薬が投与されていない状態で抗がん剤が投与された86人の奏効率は10%だった。全生存期間などでも同様の傾向がみられ、一方で毒性の増強はみられなかった。室氏は「何かしらの免疫が作用し、抗がん剤の感受性を変えている可能性がある」とし、今後、前向き観察研究として全国規模で検討していくことを計画している。胃がん治療の成績をより改善するため、現在もさまざまな免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験が行われており、その結果が待たれる。


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