2018年06月25日 「超加工食品」の食べ過ぎが、2型糖尿病や肥満の増加に拍車をかけている可能性がある。「超加工食品」を多く食べている人は、がんリスクが高いという調査結果も発表された。
超加工食品の多くは栄養バランスが悪い 「超加工食品」(Ultra-Processed Foods)とは聞きなれない言葉だが、実は私たちの身のまわりにあふれている食品だ。 米国糖尿病学会(ADA)によると、「超加工食品」とは「糖分や塩分、脂肪を多く含む加工済みの食品。保存料などを添加し、常温で保存できたり、日持ちを良くしてある食品」のことだ。 果糖や人工油脂などをたっぷり使った菓子パンなどが「超加工食品」だ。他にも、▼スナック菓子、▼カップ麺、▼ピザ・ホットドック、▼ケーキ・クッキー・パイ、▼ドーナツ・菓子パン・マフィン、▼高カロリーの清涼飲料、▼ミートボール・チキンナゲット――などがある。 調理済みの「超加工食品」の多くは栄養価のバランスを著しく欠いている。高カロリー、高脂肪、高塩分だが、他の必要な栄養素であるビタミンやミネラルや食物繊維はあまり含まれていない。 ハーバード大学の研究チームによると、清涼飲料や菓子類などの「超加工食品」に含まれる「果糖」(フルクトース)が、食品のカロリーを高めるだけでなく、2型糖尿病や心血管疾患の発症リスクも高めているという。 「超加工食品」には、添加糖以外にさまざまな添加物が含まれる。塩、油などに加えて、通常の調理では使わないものも含まれている。たとえば、香味料や乳化剤、着色料といった、食品を本物らしくするための添加物だ。米国人は大量の「超加工食品」を消費しており、驚くことに食事の全カロリーの半分以上(58%)を占めているという調査結果が、医学誌「ブリティッシュ メディカル ジャーナル」(BMJ)に発表された。 研究チームは「米国健康・栄養調査」(NHANES)の2009~2010年の9,000人以上の食事データを使用して解析を行った。
摂り過ぎると糖尿病や肥満の原因に 調査では、果糖などの添加糖の平均摂取量は、米国人の総カロリー摂取量の10%を超えていることも分かった。これは推奨量の上限を超えている。 添加糖はほとんどあらゆる食品に含まれる。パスタソースやドレッシング、クラッカー、パン、調理済みのスープ、ソーセージなど、甘いと感じない食品にも、多くの糖質が使用されている。 糖質の過度の摂取は、高血糖や高血圧、中性脂肪の増加、LDL(悪玉)コレステロールの上昇、HDL(善玉)コレステロールの減少、インスリン抵抗性などを引き起こす。 米国では2型糖尿病が増えている。米国の糖尿病人口は3,030万人で、糖尿病の有病率は9.4%に上る。糖尿病予備群の数も8,410万人と多い。 「超加工食品と添加糖の摂り過ぎが、糖尿病や肥満の増加に拍車をかけている可能性があります」と、サンパウロ大学公衆衛生学部のエウリディス マーティン スティール氏は言う。
脳は「糖質+脂質」を含む食品を好む そもそも脳は、糖質と脂質の組み合わせを本能的に好むようにできている。脂質と糖質の両方を多く含む「超加工食品」が好まれるのは、脳の働きも影響している。米国のイェール大学の研究によると、糖質と脂質のいずれかを含む食品よりも、両方を含んだ食品を食べたときの方が、脳内の報酬系のシグナル伝達が強くなる。研究チームは56人のボランティアに、(1)キャンディーなどの糖質を含む食品、(2)ミートボールやチーズなどの脂質を含む食品、(3)クッキーやケーキなどの糖質と脂質の両方を含む食品のいずれかの写真を見てもらった。さらに、オークションで競り落とせば自分が好きなものを食べることができると説明した。
超加工食品を見ると脳の報酬系が活性化 その結果、ボランティアは「糖質+脂質」を含む食品にもっとも高い値を付けた。MRIによる脳画像検査を行ったところ、そうした食品の写真を見たときに、報酬系を司る脳領域の神経回路が活性化することが分かった。「ドーナツ、フライドポテト、チョコレートバー、ポテトチップスなどの加工食品の多くは糖質と脂質の両方を含んでいますが、そうした食品は母乳を除けば自然界には存在しません」と、イェール大学心理学部のダナ スモール教授は指摘している。 「脳内の報酬系のシグナル伝達を強める高カロリーの食品ばかりを選んで食べていると、肥満や2型糖尿病、心血管疾患が引き起こされます」と注意を促している。
超加工食品ががんリスクを上昇 「超加工食品」を多く食べる人は、がんのリスクが高いことが、フランスの研究で明らかになっている。フランス国立保健医学研究所(INSERM)の研究チームは、フランス在住の10万4,980人(年齢の中央値は42.8歳)を対象に、超加工食品の摂取量と、その後5年間のがん(あらゆるがん、乳がん、前立腺がん、大腸がん)の発症状況を調べた。その結果、「超加工食品」の摂取は、がん全体のリスク上昇に影響することが分かった。摂取した食物の総量に占める超加工食品の量の割合が10ポイント増加するごとに、がん全体のリスクは12%増加した。がんの種類別に見ると、乳がんのリスクは、10ポイント増加するごとに11%増加した。特に閉経後の乳がんの増加が顕著だった。
加工度の少ない食品は安全 一方で、加工度の少ない食品(缶詰野菜、チーズ、包装されていない新鮮なパンなど)とがんのリスクについては関連性がみられなかった。また、生鮮品、加工が最小限の食品(果物類、野菜類、豆類、米、パスタ、卵類、肉類、魚類、牛乳)は、がん全体および乳がんのリスクを下げることが示された。「超加工食品は、糖分や塩分、飽和脂肪酸を多く含み、食物繊維とビタミンの含有量は少ない。さらに、加熱により発がん性物質が生成される成分が含まれている可能性がある」と、研究者は指摘している。なかには、実験動物や細胞モデルを用いた研究で発がん性が示されているために、ヒトに対する安全性が議論されている添加物を含む食品もあるという。
食品の栄養成分表示を見る習慣を 「超加工食品」は現代人の生活のすみずみに入り込んでいるが、食べ過ぎにはくれぐれも注意した方が良い。 米国糖尿病学会(ADA)は、加工食品を利用するときは、栄養成分と原材料の表示をよく見て確かめることを勧めている。これが、加工食品に何が含まれているを知るための最良の手段だという。 そうしたうえで、ナトリウム(塩分)、糖分、不健康な脂肪の少ない食品を選択すると安全だ。
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