2018/07/02 医学生物学研究所は6月29日、炎症性腸疾患などに用いるチオプリン製剤の重篤な副作用を予測できる体外診断用医薬品を7月2日に発売すると発表した。同剤は1%程度の頻度で白血球減少や全身脱毛といった重篤な副作用が発現することが知られているが、それら副作用を恐れるため炎症性腸疾患における寛解維持療法では、基本治療で効果不十分な場合、チオプリン製剤を使わず、高価な抗体製剤を使う傾向があるという。発売される診断薬は、副作用の発現をほぼ確実に予測できる性能を持っており、副作用発現リスクがないと判定された患者には、安価なチオプリン製剤が使いやすくなる。そのため共同開発した東北大学病院と同社は、医療費の適正化への寄与も期待できるとしている。発売する診断薬は、副作用発症と関連があるとされるチオプリンの代謝酵素の1つである NUDT15 の特定の遺伝子多型を検出する。その特定の多型では代謝活性が弱く、薬剤の作用が強すぎて重篤な副作用の発現に至ることが分かっており、診断薬はそのリスクをほぼ確実に予測する。厚労省の承認審査では迅速審査扱いとなり、承認申請から約5か月の4月6日に承認に至った。まだ保険上の検査点数は決定していないが、同社は、医療現場の需要が高いとして7月2日から診断薬を発売することにした。販売名は「MEBRIGHTNUDT15キット」で、販売価格は4万円弱としている。遺伝子増幅装置を用い、約2時間で測定する。医療機関、臨床検査会社に販売する。東北大病院・角田助教チオプリン製剤の安全な治療が可能になる医療費適正化にも研究開発に携わった東北大学病院・消化器内科の角田洋一助教は同日、東京都内で記者会見し、診断薬が使われることによるIBD難治例での寛解維持療法への影響について「(重篤な副作用を恐れ)チオプリンをスキップして高価な抗体製剤を使うケースが見られるが、その一部はチオプリンだけでコントロールできる可能性がある。(チオプリンによる)より安価で負担の少ない治療を安全で有効にできるようになり、医療費の適正化にもつながると考えられる」と指摘。診断薬の登場で「1%の患者の重篤な副作用のリスクを判別でき、危険な状態を回避し、99%の患者が治療を安心して受け入れやすくなる」と説明した。さらに「抗体製剤は使用していると、自己抗体が形成され効果が弱まり、増量というケースもある。そこにチオプリンと併用することで、将来的な(抗体製剤の)増量や効果減弱を防げるということも話題になっている」と述べ、治療選択肢に幅が出ることも説明した。この診断薬は、日本医療研究開発機構(AMED)によるゲノム創薬の実用化に向けた研究事業として支援を受け、東北大学病院と医学生物学研究所が共同開発した。
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