2018/07/02 03:52 厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課の池上直樹監視指導室長は7月1日、日本医薬品情報学会総会・学術大会(三重県鈴鹿市)で講演し、策定を進める医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインについて、「社内体制の整備をしっかりしていただくことが必要だ。営業部門で活動されるが、それを監督する部門を置く必要があるのではないか」と述べた。ガイドラインの策定を通じ、企業のガバナンスを強化。企業の自立・自主的な行動を促すことで、医薬品医療機器等法(薬機法)の網をすり抜ける不適切事例を防ぐ狙いがある。このほか、未承認・適応外の情報提供について科学的根拠を求めることなどをガイドラインに盛り込む考えも示した。厚労省の医療用医薬品の広告活動監視モニター事業を通じ、MRによる口頭説明や、モバイルパソコンの映像のみ使用した説明など、証拠が残りにくい、いわゆる"クローズドな場"での不適切な情報提供事例が明るみになった。また、明確な虚偽・誇大には至らないものの不適切使用を助長するケースや、研究論文などで企業側の関与が判断しにくいケースもあった。現行の薬機法をすり抜けるこうした課題への対応が求められる中で、厚労省はガイドラインの策定が必要と判断した。(関連記事はこちら) 「医薬品がその特性を生かしてふさわしい症例に対して適正に使用されるようサポートするために、扱っている医薬品には深い知識を持ち、良いところも悪いところもバランスをとって正確に情報提供してほしい」と呼びかけた。一方、医師や薬剤師など医療従事者に対しては、企業から提供される情報を批判的に吟味し、添付文書、医薬品リスク管理計画(RMP)などの情報も踏まえて適正使用の推進に注力することを求めた。この日のシンポジウムでは、未承認・適応外の情報提供についての議論がなされた。杏林大学医学部付属病院薬剤部の若林進氏は、医療従事者側のニーズとして、未承認・適応外の情報の必要性を強調。「プロモーションコードは、情報が欲しいと思っている医療関係者にはとても冷たい規則。MSLなら解決してくれるのか」と投げかけた。これに対し、池上室長は、「医療従事者からの求めに応じて個別に出す情報は偏ったものでなければ広告に該当せず、情報提供できる。厚労省としての考え方を示していきたい」と述べ、ガイドラインにも盛り込む考えを示した。日本製薬工業協会(製薬協)の田中徳雄常務理事も、「医療機関の求めに応じて、科学的根拠に基づいた資料は提供できる。MRに求めていただければ、提供することは可能だ。MRがダメならMSLでもダメだ。MRがダメならMSLに持って来て、というのも正しい方向であるとは思っていない」と応じた。広告活動監視モニター事業で不適切事例が報告されたことについて田中常務理事は、「一社であっても業界全体として大きなものを背負うことになる」との危機感を表明。各社がガバナンスを強化する必要性を強調したうえで、ひとつの方策として、製品説明会の最後のスライドに、エリア責任者の名前と連絡先を明記することを提案した。また、①不適切な資材を作らない、②不適切な資材の社内審査を通さない、③正しい資材を不適切に使わない―の"3ない!"活動を各社に徹底することも呼びかけた。一方で、「本来は不適切な活動・情報を止めるのが一番だ」との考えも表明。モニター事業で報告するだけでなく、「わかるならその場で止めてほしい」と会場の医療従事者に訴えた。田中常務理事はディオバン問題やCASE-Jなど過去の不適切事例を振り返り、「信頼回復をしていくしかない。MR活動のすべては、社内教育だ。いかに継続教育が重要かということも踏まえて、褌の紐を締め直したい」との考えも表明。「常に見られているという緊張感をもって仕事しないといけない。愚かな考えを持つひとりのMRのために業界全体が苦しむということを業界全体に徹底したい」と強調した。製薬協の上部団体である国際製薬団体連合会(IFPMA)の理事会で、コードが改訂され、ギフトが全面的に禁止されたことも紹介した。19年1月から、医療関係者に手帳やカレンダー、お香典なども禁止されることになる。ただし、研究会・講演会のメモ帳やボールペンはギフトに当たらず、配布ができるという。
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